バレエダンサーとして活躍する傍ら、体のケアにも強い関心を持ち、ジャイロキネシス®認定トレーナーとしても多方面で活躍する浦山英恵さん。
彼女がどのようにしてバレエとジャイロキネシスを結びつけ、今日のキャリアを築いてきたのか、その軌跡を語ってもらいました。
■バレエ団での転機、腰痛との向き合い
――まずは現在の活動について教えていただけますか?
現在は、バレエ講師として子どもから大人までの指導と、ダンサーとして舞台にも出演、ジャイロキネシス®のトレーナーとしてカルチャーセンターで指導をしています。


――バレエやジャイロキネシスとはどのような出会いだったんですか?
私がバレエを始めたのは、小学校1年生の時です。母がバレエ好きだったこともあり、私も踊ることが好きでした。
高校を卒業した後、バレエ団に約3年間所属したんですが、舞台に立ちながら、体を使い続ける厳しさを実感して……。特に腰痛がひどく、痛みが強くなると歩けないほどになってしまったんです。
体のケアをしっかりしなければ、今後も続けるのは難しいと感じ、バレエ団を一旦離れる決断をしました。バレエ団を退団することは非常に辛かったですが、自分の体を守ることが最優先だと感じたので。
ジャイロキネシスは、小学6年生の時にバレエスタジオの先生の勧めで体験をしましたが、その時はあまりピンときませんでした。
その後中学2年生で沢山の怪我や身体の使い方に悩んでいる時にジャイロキネシスの事を思い出し、もう一度クラスを受けた時に、身体の変化を実感したため、コンディショニングに取り入れるようになりました。
■ジャイロキネシスの魅力
――ダンサーの方にとって体との付き合い方は大きな問題ですね。ジャイロキネシスを始めたことで、どんな変化がありましたか?
実際にやってみると、ジャイロキネシスはバレエダンサー向けに考案された体操なので、私の体にもぴったりでした。それに、ただのケアではなく、バレエに必要な動きの基盤を整えてくれるんです。ジャイロを始めてから治療院に通う回数も減り、体が軽く感じるようになりましたね。
そんなバレエに必要な要素を補うことができるジャイロに出会えたことは、私にとって大きな発見でした。体に変化が出てくる中学生や高校生からも「先生に言われていることが分からない」など、体が思うように動かせなくなった時に「体の使い方を教えてほしい」と言われることが増えて。踊る中での体の使い方のお手伝いができることにやりがいも感じています。
――退団後、すぐにジャイロキネシス®のトレーナーになられたんですか?
バレエ団を離れた後、もっと自分の身体の理解を深めたいと思い、ジャイロの資格を取得するためのコースを受講しました。取得後の半年間はジャイロキネシス専門スタジオでスタッフとして働きながら、自分の体のメンテナンスをしていました。そしてカルチャーセンターで指導を始めた、という感じです。
ジャイロのクラスが提供されていない場所でも、「私ジャイロできます」と積極的にメールを送りましたね。まだマイナーなエクササイズではありますが、興味を持ってくれる方が多く、少しずつ活動の場を広げていきました。
■泣きながら進めた「フリーとしての独立」
――営業力がすごいですね! フリーとして独立する時、不安はありませんでしたか?
小さい頃からバレエ1本だった私には、自分の仕事のためにメールを送る、履歴書を書く、自己PRを考えるということが初めてで、分からないことだらけで泣きながら進めていました。
バレエ団のオーディションにはいわゆる面接のようなものがないので、「自分は何ができるのか」「自分はどんな性格なのか」自分の事なのに分かっているようで分からないということが沢山あり、考える良いきっかけになったと思います。
「不安」「失敗」「知識がない」「自信がない」という壁ばかりで、最初は自分が出来ないことに直面すると隠したくなっていましたが、周りの人に質問をすると助けてくれる方が沢山いたので、何度も何度もやり直しと成功を繰り返すことで少しずつ自信がついてきました。隠さず、恥ずかしがらず、逃げずに取り組むことは今も変わらず私の課題です。
バレエ歴が十数年とある中で、ジャイロはそこまで年数を重ねていないので、自分でクラスを作ることに最初は自信が無くて声が出なくなるほど毎回緊張していました。
今思えば、初めての経験だからこそ不安は本当に当たり前のこと。何度も挑戦することで生徒の感想、笑顔を見ることでどんどん自信がついていくようになりました。
■別のキャリアに行くことは「ダンスを辞める」ということではない
――マルチに活躍されている浦山さんですが、将来の夢や目標、ビジョンはありますか?
ダンサー、生徒さんが笑顔で楽しく生活する・踊り続けられるようサポートする人になりたいです。
日常生活の色々な積み重ねでストレスが貯まる時や、ダンサーとして沢山の注意をもらったり、鏡で自分を見ていたりすると、どんどんネガティブになることがあります。
私が怪我や体の使い方で悩んでいた時は、近くに悩みを相談したいと思える人がいませんでした。これからは、気持ちが落ち込んでいる時などに体がリフレッシュするようなジャイロのクラスやバレエのクラスが提供出来るような先生になりたいです。

――最後にキャリアに悩んでいるダンサーや親御さん、先生方にメッセージをお願いします。
私にはこれしかない。何も出来ない。
上を目指して努力し続けていると私は踊る以外に何も出来ないと思ってしまいます。ですが日常生活の中での趣味やふとした事で別のことに興味が出てきたりした時はどんどん挑戦してみてください。
違う分野で働かれている方と同じレベルで動くことは初めは難しいです。でも、そんな時は一人ぼっちにならずに、沢山の人に助けを求めて少しずつステップアップしていくとよいと思います。
あとは別のキャリアに行くことは「ダンスを辞める」という事ではありません。人生を共にしてきている大好きなダンスはこれからも生活のどこかで一緒に過ごすことは可能です!
【浦山英恵さんプロフィール】
7歳より早川惠美子・博子バレエスタジオにてバレエを始める。2021年~2023年、東京シティバレエ団に所属していた経験を活かし、現在はバレエ講師として子どもから大人まで指導し、フリーダンサーとして舞台にも出演。また、ジャイロキネシスの資格を取得し、ジャイロキネシス®認定トレーナーとして、カルチャーセンターでの指導も行う。