フリーランスとして活動する多くのダンサーにとって、避けては通れないのが「確定申告」です。舞台やレッスンに集中したいのに、慣れない事務作業に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
今回は、今年初めて確定申告を終えたばかりの現役ダンサー、小野陽子さんにインタビュー。そのリアルな体験談から、確定申告を乗り切るためのヒントを探ります。
◾️初めての確定申告はやっぱり「大変だった」
――本日はありがとうございます。まず、小野さんが普段どのような活動をされているのか、簡単にお聞かせいただけますか?
小野: はい。一つのカンパニーに所属しているのですが、他にも外部で踊ったり、業務委託としてバレエ講師をしたりしています。
――ありがとうございます。そんな中、今年の3月に初めて確定申告を終えられたとのことですが、実際にやってみて、率直な感想はいかがでしたか?
小野: そうですね、率直に言うと、やっぱり「大変だったな」という感じです。去年1年間は、結構パソコンとにらめっこしている時間が多かったように思います。
――やはり、かなり時間がかかったのですね。
小野: はい。でも、それだけ大変ではあったんですけど、無事に確定申告を終えられたときは、ほっとしたというか……。一社会人として、やるべきことをちゃんと終えられて良かったな、という気持ちのほうが大きいですね。
◾️「やらなきゃ」という思いだけで走り出した
――多くの方が「大変そう」「来年でいいかな」と後回しにしがちな確定申告ですが、小野さんが「やろう」と決意できたのはなぜだったのでしょうか?
小野: うーん、もう「やらなきゃ」と思っていたので、その思いだけですね(笑)。
――すごいですね!その一心で。
小野: はい。4月にフリーランスになったタイミングで、すぐに税務署へ行って開業届と青色申告の承認申請書を提出しました。もう、そこからは後戻りできないぞ、と。
――最初の一歩が肝心だったのですね。そこからは、どのように知識を?
小野: 本当に何もわからない状態だったので、ひたすらネットで調べたり、あとは税務署が開催している説明会に参加したりしました。
◾️税務署は意外と親切な相談窓口
――税務署というと、少し硬いイメージを持つ方も多いかと思いますが、実際に説明会などに参加してみていかがでしたか?
小野: 私も行くまではすごく硬いイメージを持っていたんですけど、参加して本当に良かったなと思います。やっぱり、わからないことをその場で直接聞けますし、自分ができていなかった部分にも気づくことができました。
――職員の方の対応はどうでしたか?
小野: とても丁寧に教えてくださいました。本当に知識がまっさらな状態で行ったので、すごく助かりましたね。
◾️一番の失敗は「口座を分けなかったこと」
――実際に確定申告の作業を進める中で、「これは一番大変だった」ということは何でしたか?
小野: 私、フリーランスを始めたときに、プライベートで使っている口座と事業用の口座を分けるということを知らなかったんです。
――あぁ、それはよく聞く話ですね。
小野: はい。もう本当に混ぜこぜで使ってしまっていて……。そうなると、1年間のプライベートも含めたお金の出入りを、全部帳簿につけなければいけなくなってしまったんです。それが本当に大変でした。
――すべての支出と収入を振り返るのは骨が折れそうです。
小野: そうなんです。普段から家計簿をつけていたのと、支払いの多くをクレジットカードやデビットカードにしていたので明細が残っていたから何とかなりましたが、本当に大変でした。これから始める方には、絶対に口座は分けたほうがいいとお伝えしたいです。
◾️確定申告に活用したツールやサービス
――その大変な作業を乗り切るために、何か使ったツールやサービスはありますか?
小野: 会計ソフトは「弥生の青色申告」を使いました。あとは、ダンサーズキャリアサポートさんにご紹介いただいた税理士事務所の方に、オンラインで帳簿のつけ方を見ていただきました。
――専門家の方にも相談されたのですね。
小野: はい。そこで本当に初めて知ることがたくさんありました。「仕訳の入力ってこうやるんだ!」とか、かなり細かいところまで教えていただいて、すごく勉強になりました。
――では最後に、これから確定申告にチャレンジするダンサーの皆さんへ、アドバイスをお願いします。
小野: まずは、先ほどもお話ししたように、プライベートと事業用でお金の管理をしっかり分けること。口座を分けるのが一番だと思います。そして、あとは本当に気力が必要です(笑)。
――(笑)。やはり気持ちは大事ですね。
小野: はい。でも、諦めずに調べれば、YouTubeとかネットとか、どこかに答えは必ずあります。本当に少しずつ、少しずつでしかないんですけど、知識を身につけて、わかる方に聞いたり、税務署のような場所の力も借りたりしながら進めていくのがいいのかなと思います。
小野陽子(おの ようこ)
福岡県出身。ダンスカンパニーに所属しながら、外部での舞台活動や業務委託契約でバレエ講師としても活動。幼少よりクラシックバレエを加藤由紀子に師事。お茶の水女子大学舞踊教育学コース入学と共に、本格的にコンテンポラリーダンスを始める。これまでに、平原慎太郎、大宮大奨、中村恩恵などの作品に出演している。